2018年のパイザ:迷子のこころ i shall be released ボブ・ディラン

  • 2017.12.31 Sunday
  • 00:01

 もともとよく見られてはいたのだが、いっときどういう訳か、工藤直子の詩・あいたくての記事にヒットが集中した。その詩の中に、<おつかいの とちゅうで /迷ってしまった子どもみたい>と<みえないことづけをにぎりしめて>と云う句がある。

 この詩に、わたしが今惹かれるのは、まいごの子供と、大人の<こころの迷子>の二重構造にある。

 

 おつかいを頼まれて、迷うとき、大人は通常、目的を忘れることはない。ところがこの詩は、冒頭で、たれに、いつ会うのかわからない、あるべきはずの目的地を失っている・目標地がはっきりしていない設定である。これは、現代に生きる大人の<こころの迷子>の構造と同じと云っていい。

 

 まいごの子どもは、普通、どうやって道を知るのか? <見えることづけ>を見せ、人に尋ね、地図をたよりに、目的地を探す。 

 そのための第一歩は、当然だが、現在地を知ることだ。

 では、こころが迷子になった時の一歩は、どうするか? <みえないことづけ>を頼りに、こころの目的地を探すことではない。やはりこころの現在地(その場その時here and now)を知ることが第一歩なのだ。ひとの目的は、現在の、自己の主体的条件(とくに主体的感情)と密接にかかわるものだから、<こころの現在地>を確認し続けることが、<みえないことづけ>を見えるものにする重要な一歩であり、最終歩でもある。

 この、書けば当たり前の真理を、まぬけなわたしは、世界に誇る、日本の独創の心理臨床家・河野良和氏とその弟子・大多和二郎両氏の理論と長年の実践・<感情の二重モニタリング>から身をもって教えられたのだ。

 

 わたしの読書の特徴の一つは、何度も読み返すことだが、この一年いつも持ち歩き、雲の柱・火の柱のように、毎日何度も繰り返し読んだのは、彼らの著作と、地下鉄サリン事件の河野義行『今を生きる喜び』、毎日出かけお世話になった岩見沢市立図書館で出会った・ユダヤ人哲学者による・「わたしは命令に従っただけだ」と述べたナチスドイツのアウシュビッツ強制収容所の所長アイヒマンの・息子への公開書簡の形の哲学書・『われらみな、アイヒマンの息子』(ギュンター・アンダース)だった。

 

 今年お店に来ていただいたお客様、直接お目にかかった皆さん、そしてブログを通して縁をつないだ名も知らぬ・信じられないほど多くの・遠くの、近くの皆さん、コメントを送ってくださった方々、facebookを通じて、感情の観念的二重化の議論をしてくれた京都の、尊敬する若いIさん・美佐子さん・希望さん、ありがとうございました。

 60年代に作られた、ボブ・ディランの、この代表作と、その歌詞の・わたしのつたない訳を、こころからのお礼とパイザのこころを込めて、同時代を共に生きる皆さんに、送ります。

 来年が、東北アジアや世界で、戦争と災害のない一年であることを。精養軒が、皆さんとともに、出村店長を先頭にバイトの皆さん、家族とともに、ささやかでもさらに一歩、歩むことができることを。 

 

 この曲が使われている映画『any day now 邦題チョコレートドーナツ』は、ゲイの売れない歌手とゲイを隠して生きる弁護士、家族に捨てられたダウン症の子供、3人が周囲や社会・制度の偏見の中で家族として生きる物語です。

I shall be released
いますぐにも

 

’y say ev'rything can be replaced
’y say  ev'ry distance is not near
i remember ev'ry face
of ev'ry man who put me here

なんだって代わりがきくって言う
どんなに近くても 遠いんだって
僕はおぼえているよ ひとりひとりの顔
ここに追い込んだみんなの顔を

'y tell you ev'ry man must've protection
then they tell you ev'ry man is bound to fall
me, i swear i see my own reflection

somewhere far beyond these walls

どんなひとでも守ってあげなくちゃいけないって言う

どんな人だって落ちていってしまうからって

僕には 僕には自分のホントの姿が見えるんだ

閉ざされたこの壁

ずっと向こう側に
i see my light come shining
from the west unto the east
any day now, any day now
shall be released

ぼくはみえる 光が
西から東へ 輝きながら降り注ぐ
いますぐにも こころも

この身も
自由になるんだ

yonder stands in this lonely crowd
a man who swears he's not to blame
all day long i hear him calling
crying out that he's been framed

あそこに きょうも男がいる ひとり 孤独な群れの中で

うめいている
わるいのか、ぼくは悪いのか!
一日中 男の呼ぶ声が耳に焼きつく

ずっと ずっと はめられていたんだ!

but i see my light come shining come shining
from the west unto the east
oh, any day now, any day now
i shall be released
でも、ぼくには見える 光りが

輝きながら 輝きながら
西から東へ 降り注ぐ  
いますぐにも こころも

この身も
自由になるんだ

they tell you they tell youev'ry man must've protection
then they tell you they tell you ev'ry man must fall

 i swear i swear i see my own reflection

 far beyond these walls

どんなひとでも守ってあげなくちゃいけないって言うくせに

どんな人だって落ちて行ってしまうからって

本当なんだ 僕には、僕のホントの姿が見えるんだ

閉ざされたこの壁

ずっと向こう側に
that's right i see my light come shining come shining come shining
from the west unto the east
i know, my god

any day now, any day now
i shall be released

 ほんとうさ ぼくには 見える 自由が輝きながら降り注ぐ

輝きながら 輝きながら光りとなって
西から東へ降り注ぐ 
ぼくはわかっているんだ 未来よ

いますぐ いますぐにも 僕は
自由につつまれる

いまこそ

こころをひろげるんだ

yes, i see my light come shining
from the west unto the east
and i swear, i swear, i swear my love,
we shall be released

ほんとうさ ぼくには見える 光りが

輝きながら 
西から東へ輝きながら 降り注ぐ 
いますぐ いますぐにも 僕らは
手を結ぶ

いまこそ

こころをひろげるんだ

    (アラン・カミング版アイ・シャル・ビー・リリースト 訳おや爺)

補注1:詩人のアーサー・ビナードさんにお会いした時、帰りがけに、ディランのi shall be releasedをぜひ訳して下さいとお願いしました。少し驚いたように言われました。ディランは版権が難しいんだよね。どう訳されているの?解放されるとかですかね。

 そういう訳し方に否定的な様子でした。

 そのことが、訳しながら、ずっと頭に浮かびました。

 

補注2:ディラン作曲・作詩とこの映画にありますが、アラン・カミングの歌う歌詞とディランのものとは違うところが幾つもあります。最もディラン自身もコンサートによって歌詞が変わるけど……。

 わたしにとって違いを感じるのは、wallをアランは複数にしているところですね。彼にとって世界は閉塞感がもっと強い感じなんでしょう。孤独な群れの中で叫ぶ男は、アラン版では、孤立感を深める向こうの方におり、ディラン版では、ディラン自身の<汝ら兄弟姉妹>のように、横にいる設定になっています。

 

補注3:この映像の訳も素敵なんですが、any day nowの訳が、「いつの日か」となっています。普通イギリス英語、アメリカ英語どちらの意味・用法とも、期待・願望を込めた(any dayであっても今という言語イメージですか)very soonの意味になってます。『今すぐにも』の日本語訳が一番近いニュアンスのような気がしますが、英語に詳しい方、教えていただけますか?

 

補注4:<感情の二重モニタリング>については、ブログ左のカテゴリー欄最後の、<こころの実験>をご覧ください。

 

  この、i shall be releasedを聴くと、若い女性二人の日常に、歌詞が自然に入っていることに、希望と、深い感動を覚える。

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