思い出の歌:真夏の果実 サザン・オールスターズ

  • 2017.06.06 Tuesday
  • 09:01

 奥さんの一周忌を終えた、大学以来の友人に、今度の休みに一緒に旅に出ようよと誘った。

 遠くはムリだよ、アテはあるのかい。増毛はどうだ? 何があるの。

 えっ、なにがあるのって、なにも無くたっていいだろ、旅なんだから、タコざんぎを食べる旅だよ。

 分かった。

 

 天気は久しぶりの快晴。気温は15度くらい。初夏のバイクにはちょっと寒い。札幌の彼のマンションまでバイクで向かう。奥さんが、韓国で買ってくれた牛皮の、いかにもおっさんパンツを初めてはいた。バイクに乗ると思いのほか温かく、気持ちよくバイクに乗れた。いつも待ち合わせに遅れると文句を言われているけど、今日は少し早く着いた。

 待つのは苦にならないタイプなので、マンション駐車場わきの低い塀に座って、ビルの向こうの、薄い雲が浮かんだ青空を見ていた。後は本さえあれば何時間でも待てそうな気がする。

 

 バイクに乗るのは止めて、彼の車で行くことにした。大学同期で・奥さんのT子が亡くなって、中古のオープンを買ったのだ。

 国道36号線を通り、札幌の中心から北上して、石狩に抜けた。てっきりすぐ海岸の見える道を走るのかと思っていたら、なかなか海は姿を見せない。途中花を買い、T子の墓がある石狩の霊園に寄った。長いトンネルの道が続く。

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 風は冷たいけど、日差しは気持ちがいい。ようやく海が見えて見晴らしの良い道をけっこうな速度で走る。バイクは別だが、わたしは車に乗ると、超、燃費優先で飛ばすことはない。かれは注意深い男なので、安全なのだが、バイクと違って身体が車の速度に慣れない。こころは緊張がほどけて来るのがわかる。その証拠に、店から離れれば離れるほど、眠気とは別に、あくびが出て来るのだ。立て続けに10回位あくびが出て来るのを、横目で、友人が呆れて見ていた。

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 あ〜、気持ちがいい。あくびの連続回数をデータにとれば、店からの距離数を測れるセンサーになるかもしれない。

 

 増毛に着き、國稀酒造の脇で、暑寒別岳から流れる冷たい伏流水を二人で飲んだ。昼食をとり、高台の、海が見える喫茶店のベランダで、コーヒーを飲みながら、どうでもいい話をした。

 

 午後3時過ぎになっていた。帰路につく。

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 海岸沿いの道を走る。初夏の日差しを浴びて、いつの間にか助手席で寝てしまった。

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 目覚める少し前から頭の片隅で歌が聞こえた。かれがハンドルを握りながら、歌っていたのだ。田舎の高校で、楽譜もなく・ラジオから流れるサイモンとガーファンクルをフルコピーして覚えた・プロに誘われたギターの名手だった。その彼が歌わなくなり、ギターを弾かなくなって何年経つだろう。

 

 『真夏の果実』だった。久しぶりの、少ししわがれた・独特の艶のあるかれの歌(声)がこころの乾いたところに滲みて、悩んでばかりいた大学時代、彼の部屋に泊まり込んだとき彼が話してくれたことや、亡くなったT子の部屋で話したことが、胸の上のうえまで溢れそうになった。首を落とし、眠ったふりをして彼の歌を聞いた。

 切なくて、なんて幸せな時間。

 顔をあげたら、呆れられた。

 お前なら、あくびをし続けるか、口を開けてばったり寝るかで、相変わらず、ホント、どうしようもない奴だな。

 

 ふたりで笑った。

 

コメント
こんにちは。

Uruさんの“真夏の果実” 切なく 響いてきます。
あぁ、こんな歌詞だったのですね、今更ですが。
桑田佳祐さんのあの独特の声とメロディーは、しっかり頭に刻まれてるんですが、、、。
Uruさんのしっとりとした歌声を聴いて、こんなにいい歌だったのねと、、気づくの遅すぎ(笑)
この頃、Uruさんの歌にハマってます。
定点カメラでモノクロの映像を見ながら、Uruさんのバラード。
心がとても落ち着きます。

友のさりげない優しさを感じながら
亡き妻を想い、歌う “真夏の果実”。
鼻の奥がツンとしてきます。

私も今年の5月連休に増毛へ行ってきました。
旧駅舎で、たこザンギと海老のお味噌汁、、美味でした。
國稀酒造でお酒と酒粕を購入。
白地に赤線の入った可愛らしい増毛灯台。印象的でした。
國稀酒造脇にある冷たい伏流水、そういうのあったんですね。
高台にある海の見える喫茶店、今度行ってみたいと思いました。
帰途、オープンしたばかりの厚田の道の駅「あいロード」へ。
おや爺さん、いつかのブログに、この道の駅の写真をUPされてましたね。

写真と文章と真夏の果実。
素敵なロードムービーを見させていただいたような気分です。








  • ゆきえ
  • 2018/08/29 5:35 PM
 ゆきえ様、コメントありがとうございます。
 <Uruさんのしっとりとした歌声を聴いて、こんなにいい歌だったのねと、、気づくの遅すぎ(笑)>
 そういうことってありますよね。カバーを聞いてあらためて気づくよさって。わたしにとって、ボブ・ディランが特にそうですね。カバーを聞いて初めてこんな美しい旋律なんだって。そういうときは、ディランもすごいけど、それに気づくカバー・シンガーの能力に驚いちゃいます。彼の曲に<don't think twice・くよくよするなよ>、<i shall be released>って曲があるんですが、ppmやバエズと、ディランでは肌触りが相当違いますね。http://blog.seiyouken.moo.jp/?eid=1187627
http://blog.seiyouken.moo.jp/?eid=1187841

 大学時代からの、この友人は、群れることを嫌うのに、同僚や後輩、生徒から慕われる男でした。奥さんの病気の介護で仕事を途中でやめましたが……。つたない文章から想いを共有してくださり感謝いたします。
  • おや爺
  • 2018/08/30 2:43 AM
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