詩の旅:if not for you もしきみが (『もしも、詩があったら』より)

  • 2017.05.01 Monday
  • 23:05

 <もしも>という言葉、考えをばねに、詩や生きること、世界を見るアーサー・ビナードさんの本の紹介の第二回目です。今回の詩は、去年ノーベル文学賞をとったボブ・ディラン作詞・作曲で、ビートルズのジョージ・ハリスンも歌った<if not for you>です。アーサーさんはこの詩を、詩人高村光太郎の有名な『もし智恵子が』と比較しながら解説しております。その解説も独特で、いかにも高村の痛いところをついていますね、というかアジア的知識人の、いまも続く痛いところをついていて、「核心にふれないまま詩が終える」とまで言っておりますね。素粒子論の武谷三男の、高村光太郎評を思い出しました。

 

 アーサーさんにお会いしたとき、ボブディランの<i shall be released>と<my back pages>のアーサー訳を、是非読みたいと言うと、ディランは版権が難しくて、絵本以外に原詩を載せて訳すことができないんですよね、と言われました。一緒に訳しましょうと言われて、気絶するほど驚きましたがな。多分誰にでも気軽に言うんだろうなぁ……。

 本当の詩人の訳と、おや爺が以前訳してブログに載せたものを比較してみましょう。実は、ディランの詩と、ハリソン版の詩ではいくつか違うところがあります。わたしはハリソン版を、アーサーさんは多分ディラン版をもとに訳したと思いますが、それにしてもえらい違いですが、あぁ、アーサーさんもこの英語の岩盤をわたしと同じイメージに受け取ったんだと思うところもありました。

 

 3行目の<I couldn't even see the floor>です。学校英語では、床も見えないとなるんでしょうが、ようするに立ち上がる気力もないイメージです。アーサーさんは英語のthe floorのニュアンスを生かして、自分の足もとも見えないとみごとに救いあげています。一方わたしの訳は2行目から4行目にかけた全体で、そのイメージを表現したということになります。

 

If not for you              
あなたが いたから(おや爺訳)               もしきみが(アーサー・ビナード訳)


If not for you,
Babe, I couldn't even find the door,
I couldn't even see the floor,
I'd be sad and blue,
If not for you.
きみがいなければ                 もしきみがいなかったら

あの部屋で 今日も ヒザを抱えて、      ぼくは閉じこもったまま、出口が見つからない、

ひとり 出口にも気づかない           入り口も、自分の足もとも、きっと見えないだろう、

立ちあがるなんてムリ               ただただ沈みっぱなしだろう、

クズだって思ってた                 もしきみがいなかったら。

もしきみがいなければ


If not for you,
Babe, the night would see me wide awake
The day would surely have to break
But it would not be new,
If not for you.

きみがいなければ                  もしきみがいなかったら

一晩中眠ることもできないまま           ぼくは眠れないまま、じっと夜明けを待つ、

朝の陽射しを迎えたのに              太陽が顔を出しても、少しも嬉しくないだろう、

初まりだ って感じれない              その光はもう手垢にまみれているだろう

もしきみがいなければ                もしきみがいなかったら。


If not for you
My sky would fall,
Rain would gather too.
Without your love I'd be nowhere at all,
I'd be lost if not for you,

きみがいなければ                    もしきみがいなかったら
ぼくの空はがらがらと崩れ              ぼくの空は崩れ落ちて、雨ばかり延々と

雨が瓦礫のように降りしきる             降りつづくだろう、きみの愛がなかったらぼくは

きみのふかい悲しみにふれなければ        いつまでも真っ暗闇の中、

ぼくはいまだに居場所のないまま          もしきみがいなかったら。

あてどないまま

もしきみがいなければ

 

If not for you,
The winter would hold no spring,
Couldn't hear the robin sing,
I just wouldn't have a clue,
If not for you.

きみがいなければ                     もしきみがいなかったら

長い冬がたとえ終わっても                ぼくの冬は終わらない、春が遠ざかって、たとえ

春を告げるツグミの歌だってぼくには虚しいだけ  コマツグミが鳴いても、ぼくの耳には届かないだろう、

何一つ気づかず わからないまま            迷いっぱなしで、何も胸に響かない、

生きる価値などないって思ってた            もしきみがいなかったら。

もしきみがいなければ

 

If not for you
My sky would fall,
Rain would gather too.
Without your love I'd be nowhere at all,
I'd be lost if not for you,

きみがいなければ
ぼくの空はがらがらと崩れ

雨が瓦礫のように降りしきる

きみの愛をしらなければ

ぼくはいまだに居場所のないまま

あてどないまま

もしきみがいなければ

 

If not for you,
The winter would hold no spring,
Couldn't hear the robin sing,
I just wouldn't have a clue,
If not for you.

きみがいなければ

長い冬がたとえ終わっても

春を告げるツグミの歌だってぼくには虚しいだけ

何一つ気付かず わからないまま

生きる価値などないって思ってた

もしきみがいなければ

      (ボブ・ディラン作詞作曲 ジョージ・ハリスン版訳)

 

 ディランが、共に生活する奥さんに送った歌です。ホント、いい曲です。手

 

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