詩の旅:奈々子に 吉野弘

  • 2011.11.28 Monday
  • 15:01


 当店の主任・出村が、先週、無事、おとうちゃまになったので、今回の店に置く詩は、吉野弘の「奈々子に」にしました。

 優れた詩は読み手に、ある種のショックを与えるものだとするなら、この詩は、親であるにもかかわらず、『お前に多くを期待しないだろう』と言うところがそこに当たると思います。公然、非公然を問わず、親と言うのは確かに子供にこうあって欲しい(もしくはこうならないでほしい!)という期待を抱いてしまいがちだからです。

 「お父さんははっきり知ってしまった」とは、だれのことなのでしょうか? 他人のことなのでしょうか、それとも期待にこたえようとした本人自身の経験なのでしょうか? たぶん自身の体験を忘れられないからこそいまだに詩人なのでしょう。自分を愛する心を失いそうになる経験を、自分と他者の酸っぱい思いの中でいまも積んでいるに違いありません。

 人間は生命持続を求める生命体のひとつだから、自己愛から出発するのは必然なはずなのに、他者や外部世界との関係のなかで、なぜか自分を愛する心を失っていくのです。

 理想とする観念的自己が、現実の自己に対して厳しく問い詰めてしまうということもあるでしょう。

 この詩人は、我が子に<多くの期待>しないかもしれませんが、我が子に自分を愛する心を持ってほしいという・自分自身でも難しいと分かっていながら、親として子に対して、むずかしく、<大きな期待>をしてしまっているところに、切っても切れない<親ー子>の関係性の切なさがあり、この詩のリアリティがあるのだと思います。
 
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